トに送った手紙に、講堂の事から講師の態度の事まで細かく論じた位で、常に注意を怠らなかった。
 それから市科学会で講演するようになってから、スマートの雄弁術の講義を聴きに行き、その後(一八二三年)には一回、半ギニー(十円五十銭)の謝礼を出して単独に稽古をつけてもらった。そればかりでなく、ファラデー自身の講演をスマートにきいてもらって[#「きいてもらって」に傍点]、批評を受けたこともある。但し、ファラデーの講演振りは雄弁術で教えるような人工的の所にはかぶれなくて、活気に満ちていた[#「活気に満ちていた」に傍点]。
 ファラデーの書いた物の中にも、
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
「決して句を繰り返すな。
「決して修整するために跡に戻るな。
「ちょっと、ある言葉を忘れても、チェッチェッとか、エーエーとか言わず、しばらく待っておれば、すぐに続きを思い出すものだ。こうすると、悪い習慣がつかないで、すらすらと出るようになる。
「決して他人の言うてくれる批評を疑うな。」
[#ここで字下げ終わり]
 姪のライド嬢はしばらくファラデーの所に厄介《やっかい》になっていたが、その話に、「マルガ
前へ 次へ
全194ページ中76ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
愛知 敬一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング