ないか。大西洋なり太平洋なりを航海する船と通信したり大洋の向うの陸から此方の陸へと通信する無線電信[#「無線電信」に傍点]も、ファラデーの電気ではないか。
しかし、ファラデー自身は応用の事には少しも手を出さなかった[#「応用の事には少しも手を出さなかった」に傍点]。せっかく、研究して実用に近い所まで来ると、急に方面を換えてしまった。特許も一つも取らなかった。さればといいて実用を軽んじたのではない[#「実用を軽んじたのではない」に傍点]。
王立協会の金曜講演には、有用な発見の事をよく話した。ゴムの原料や、これから出来た材料、エリクソンの発明にかかる太陽熱利用の機械、鏡にメッキするペチットジェンの方法、木材の乾燥や、それの腐蝕を防ぐ方法、ボネリーの電気応用絹織機、バァリーの考案にかかる上院の通気法等で、ファラデー一生の最後の講演はジーメンスのガス炉の話であった。
ファラデーが塩素につきて講演したとき、結末の所で言ったのに、
「新しい発見の事を聞くと、それは何の用に立つかと、すぐにきく癖の人がある。フランクリンはかような人には嬰児は何の用に立つのか[#「嬰児は何の用に立つのか」に傍点]
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