上の発見は盗まれるものなることを知っておったので、この後は学界で発表するまでは秘密にして[#「学界で発表するまでは秘密にして」に傍点]、外の人に知らせなかった。反磁性の発見をしたときも、ごく心易いデ・ラ・リーブにだけは手紙で報導したが、それもローヤル・ソサイテーで発表するまでは、他の人に話してくれるなと、特に書き添えて置いた。
ファラデーが後進の人達に話したのには、研究をどんどんとやり、やりてしまったら、まとめてすぐに発表せよというので、すなわち「勉強し[#「勉強し」に傍点]、完了し[#「完了し」に傍点]、発表せよ[#「発表せよ」に傍点]」というのであった。
三九 学界の空気
ファラデーが最初デビーに手紙を送ったときには、商売は利己的のもので嫌だと言った。デビーは、それは世間見ずの若い考で、数年も経つとその非をさとるだろうと言った。
幾年か後に、クロッス夫人がファラデーの実験室に来た時に、学界の空気に感心したと見えて、ファラデーに「俗人の浅墓《あさはか》な生活や日日の事に齷齪《あくせく》するのとは全くの別天地で、こんな所で研究をしておられたら、どんなに幸福でしょう」
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