出来ません。しかし自分の為めに、貴女の愛情をも曲げて下さいと願うほどの我儘《わがまま》者でない様にと心がけてはおります。貴女を御喜ばせする様にと私が一生懸命になった方がよいのか、それとも御近寄りせぬでいた方がよいのか、いずれなりと御気に召した様に致しましょう。ただの友人より以上の者に[#「ただの友人より以上の者に」に傍点]私がなりたいと希《こ》い願ったからとて、友人以下の者にしてしまいて、罰されぬようにと祈りております。もし現在以上に貴女が私に御許し下さることが出来ないとしても現在私に与えていて下さるだけは[#「だけは」に傍点]、せめてそのままにしておいて下さい。しかし私に御許し下さるよう願います。」
二五 結婚
サラはこの手紙を父に見せると、父は一笑に附して、科学者が、馬鹿な事を書いたものだといった。ファラデーは段々と熱心になる。サラは返事に困って躊躇し、※[#「姉」の正字、「女+※[#第3水準1−85−57]のつくり」、65−6]のライド夫人とラムスゲートの海岸へ旅行に行ってしまった。ファラデーは、もうジッとしてはいられない。追いかけて行って、一緒にドーバーあたりで
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