手紙を受取って、ローマで十二枚にわたる長文の返事[#「十二枚にわたる長文の返事」に傍点]を出した。これは一月の事だが、その後二月二十三日にも手紙を出した。この時には事件がやや平穏[#「平穏」に傍点]になっていた時なので、
「サー・デビーが英国を出立する前、下僕が一緒に行くことを断った。時がないので、代りを[#「代りを」に傍点]探すことも出来なくて、サー・デビーは非常に困りぬいた。そこで、余に、パリに着くまででよいから、非常に必要の事だけ代りをしてはくれまいか、パリに行けば下僕を雇うから、と言われた。余は多少不平ではあったが、とにかく承知をした。しかしパリに来て見ても、下僕は見当らない[#「下僕は見当らない」に傍点]。第一、英国人がいない。また丁度良いフランス人があっても、その人は余に英語を話せない。リオンに行ったが無い。モンペリエに行っても無い。ゼネバでも、フローレンスでも、ローマでも、やはりない。とうとうイタリア旅行中なかった[#「なかった」に傍点]。しまいには、雇おうともしなかったらしい[#「雇おうともしなかったらしい」に傍点]。つまり英国を出立した時と全く同一の状態[#「同一の状
前へ
次へ
全194ページ中32ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
愛知 敬一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング