えしている。エム・ピクテーの所の三角稜《プリズム》を借りて、そのスペクトルを作った。」
それから、終りには、
「近頃は漁猟[#「漁猟」に傍点]と銃猟[#「銃猟」に傍点]とをし、ゼネバの原にてたくさんの鶉《うずら》をとり、ローン河にては鱒《ます》を漁った。」
などとある。
一六 デビー夫人
かくファラデーが、辛棒出来かねる様にいうているのは、そもそも何の事件であるか。これにはデビイの事をちょっと述べて置く。
デビーが一八〇一年に始めてロンドンに出て来たときは、田舎生れの蛮カラだったが、都会の風に吹かれて来ると、大のハイカラになりすまし、時代の崇拝者となり、美人の評判高かった金持の後家と結婚[#「結婚」に傍点]し、従男爵に納まってサー(Sir)すなわち準男爵[#「準男爵」に傍点]を名前に附けるようになり、上流社会の人々と盛んに交際した。この度の旅行にもこの夫人が同行した[#「夫人が同行した」に傍点]が、夫人は平素デビーの書記兼助手たるファラデーを眼下に見下しておったらしい。
さて上に述べた手紙に対して、アボットは何が不快であるかと訊《き》いてよこした。ファラデーはこの
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