に暖炉や黒板があり、壁には図面などが掛かるようになっている。机の前には半円形になった聴講者の腰掛がならべてあり、一列毎に段々と高くなり、その上には大向うの桟敷に相当する席もあり、全体で七百人位は入れる。
 この室はファラデーの時代には非常に大きい講堂として有名[#「非常に大きい講堂として有名」に傍点]なものであった。しかし今日では、ドイツ辺の大学の物理講堂は、無論これ位の大きさはあるので、昔の評判を耳にしていて、今日実際を見ると、かえって貧弱の感がす[#「貧弱の感がす」に傍点]る。
 また階下には小さな化学実験室がある。これは初めに小講堂であった室で、その先きに、昔からの実験室がある[#「昔からの実験室がある」に傍点]。炉や砂浴や机などがあり、棚には一面にいろいろの道具や器械が載せてある。この実験室は今でも明るくはないが、昔はもっと暗かったそうである。この実験室こそファラデーの大発見をした室である[#「この実験室こそファラデーの大発見をした室である」に傍点]。その先きに暗い物置があるが、これから狭い階段を登ると、場長の住む室の方へとつづいている。
 以上が大体ファラデー時代の王立協会の
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