。ハッと意識がついて見ると、自分は前と同じ場所に立ったままで、手もそのままではあったが、ガラス管は飛び散り、ガラスの覆面も滅茶滅茶に壊《こ》われてしまっておった。
またある日、このガスを空気ポンプで抽《ぬ》くと、静に蒸発した。翌日同じ事をやると、今度は爆発し、傍にいたデビーも腮《あご》に負傷した。
かようなわけで、何時どんな負傷をするか知れないのではあるが[#「何時どんな負傷をするか知れないのではあるが」に傍点]、それでもファラデーは喜んで実験に従事し、夕方になって用が済むと、横笛を吹いたりして楽しんでおった。
八 勉強と観察
ファラデーは暇さえあれば、智識を豊かに[#「智識を豊かに」に傍点]することを努めておった。既に一八一三年にはタタムの発起にかかる市の科学界に入会した。(これは後につぶれたが)。この会は三・四十人の会員組織で、毎水曜日に集って、科学の研究をするのである。この外にもマグラース等六・七人の同志が集って、語学の稽古をして、発音を正したりなどした。
一方において、王立協会で教授が講義をするのを聴いたが、これも単に講義をきくというだけでは無く[#「単に
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