報告し、かつ色々の出来事は日記に一々記録して置くこと。また毎週一日は器械の掃除日とし、一ヶ月に一度はガラス箱の内にある器械の掃除をもして塵をとること。」というのであった。
しかしファラデーは、かような小使風の仕事をするばかりでなく、礦物の標本を順序よく整理したりして、覚書に定めてあるより以上の高い地位を占めて[#「高い地位を占めて」に傍点]いるつもりで働いた。
ファラデーが助手になってから、どんな実験の手伝いをしたかというに、まず甜菜《てんさい》から砂糖をとる実験をやったが、これは中々楽な仕事ではなかった。次ぎに二硫化炭素の実験であったが、これは頗る臭い物である。臭い位はまだ可《よ》いとしても、塩化窒素の実験となると、危険至極の代物だ[#「危険至極の代物だ」に傍点]。
三月初めに雇われたが、一月半も経《た》たない内に、早くもこれの破裂で負傷したことがある。デビーもファラデーもガラス製の覆面《マスク》をつけて実験するのだが、それでも危険である。一度は、ファラデーがガラス管の内に塩化窒素を少し入れたのを指で持っていたとき、温いセメントをその傍に持って来たら、急に眩暈《めまい》を感じた
前へ
次へ
全194ページ中17ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
愛知 敬一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング