厚さ〇・五インチ。鉛の硼硅酸塩。これで実験した。同じ磁極または反対の磁極を(偏光につきていう)両側に置きて、直流並びに交流で実験したが、結果は見えない。されど反対の磁極を一方の側に置いて実験したら、偏光に作用した[#「偏光に作用した」に傍点]。これによって、磁気力と光とは互に働き合うことを知り得た。これは非常に有望のことで、自然界の力の研究に大なる価値があるだろう。」
と書いた。
 それから四日間休み[#「四日間休み」に傍点]、その間にもっと強い磁石を他から借りて来た。これで実験したところ、著しく作用が現われた。かつ磁石の作用は偏りの面を一定の角だけ廻転さすので、この角は磁気力の強さにより、また磁気力の生ずる電流の方向によることも発見した。
 そこで、前に成功しなかった種々の物体を取って再び試みたところ、どれもこれも好成績を示した[#「好成績を示した」に傍点]。
 十月三日[#「十月三日」に傍点]には、磁場に置いてある金属の表面から反射する光[#「反射する光」に傍点]につきて実験し、鋼鉄の釦《ボタン》ではその面から反射する光の偏りの面が廻転するようであった。しかし、この釦の面はごく平かでないので、結果も確実とは言えなかった。
 磁場に置いてある金属の面で光が反射する場合に、偏りの面の廻転することは、後にケルが確かめた[#「確かめた」に傍点]。ケルの効果[#「ケルの効果」に傍点]と呼ばれるのがそれである。
 十月六日[#「十月六日」に傍点]には、ガラス瓶に液体を入れ、これを磁場に置いて、何にか機械的または磁気的作用[#「機械的または磁気的作用」に傍点]が起りはせぬかを調べたが、これも駄目であった[#「駄目であった」に傍点]。
 次にファラデーは、磁気が光に作用するからには、反対に光から磁気を生じ得る[#「光から磁気を生じ得る」に傍点]のではあるまいかと考えた。十月十四日は[#「十月十四日は」に傍点]幸いに太陽が強く輝いておったので、この実験を試みた。コイルに作った針金を電流計につないで置き、コイルの軸の方向に太陽の光を導き入れたので、初めにはコイルの外面を葢《おお》うて内面のみに日光をあて、次には内面を葢うて外面にのみ日光をあてた。いずれも結果は出て来なかった[#「結果は出て来なかった」に傍点]。
 それからコイルの内に磁気を全く帯《お》びない鋼鉄の棒を入れ、これを日
前へ 次へ
全97ページ中74ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
愛知 敬一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング