大きいのを造ることを考えてくれという注文であったが、ファラデーは他の方面の仕事が急がしいからというて、断わった。それゆえ、大きいレンズを作って、望遠鏡の改良をするというような実用的の成功までには至らなかった。しかし、万事塞翁が馬で[#「塞翁が馬で」に傍点]、未来の事はちょっとも分らぬものである。ファラデーがこの際作った鉛の硼硅酸塩ガラスがある。重ガラスといわれるものであるが、このガラスの切れを使って、後にファラデーは磁気の光に対する作用[#「磁気の光に対する作用」に傍点]や、反磁性[#「反磁性」に傍点]を見つけることに成功したのである。それゆえもしこのガラスが無かったならば、この二大発見はもっと遅れた筈[#「もっと遅れた筈」に傍点]だともいえる。
 ガラスの研究をやっておった間にも、ファラデーは他の研究もした。すなわち、ナフサリンを硫酸に溶して、サルホ・ナフサリック酸を作ったり、「化学の手細工」という本を書いたりした。
 これで、ファラデーの研究の第一期は終った。この間に発表した論文は約六十で[#「六十で」に傍点]、その中六つがおもなもので、発見としては、化学の方で、ベンジンとサルホ酸。物理の方では、塩素の液化と電磁気廻転とである。

    第二期の研究

     六 磁気から電流

 ファラデーは電磁気廻転を発見してから、電流と磁気との関係について、深く想いを潜めておった。もちろん、この関係に想いをめぐらしていた者は、ただにファラデーのみでなく、他にも多くあった。その中で成功した一人はスタルゲヲンで、電磁石[#「電磁石」に傍点]の発見をした。鉄心を銅線で巻き、銅線に電流を通ずると、鉄心が磁気を帯ぶるというのである。
 かく、電流を用いて磁気を発生することが出来るからには、逆に磁気を用いて電流を起すことも出来そうなもの[#「磁気を用いて電流を起すことも出来そうなもの」に傍点]だと、ファラデーは考えた。前に述べた通り、一八二二年にも、ファラデーは手帳に、「磁気を電気に変えること」と書きつけた。一八二四年十二月[#「一八二四年十二月」に傍点]には、銅線のコイルの内に棒磁石を※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]し込んで、いろいろと実験して見たが、結果は出て来なかった[#「結果は出て来なかった」に傍点]。翌二五年十一月にも[#「翌二五
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