ん》耐震的能率《たいしんてきのうりつ》を増《ま》すのは當然《たうぜん》である。
* * * * *
建築《けんちく》に耐震的考慮《たいしんてきかうりよ》を加《くは》ふるとは、地震《ぢしん》の現象《げんしやう》を考究《かうきう》して、材料《ざいれう》構造《こうざう》に特殊《とくしゆ》の改善《かいぜん》を加《くは》ふることで、これは餘程《よほど》人智《じんち》が發達《はつたつ》し、社會《しやくわい》が進歩《しんぽ》してからのことである。今《いま》その動機《どうき》について試《こゝろ》みに三|要件《えうけん》を擧《あ》げて見《み》よう。
第《だい》一は、國民《こくみん》が眞劍《しんけん》に生命《せいめい》財産《ざいさん》を尊重《そんてう》するに至《いた》ることである。生命《せいめい》を毫毛《こうもう》よりも輕《かろ》んじ、財産《ざいさん》を塵芥《ぢんかい》よりも汚《けが》らはしとする時代《じだい》においては、地震《ぢしん》などは問題《もんだい》でない。
日本《にほん》で國民《こくみん》が眞《しん》に生命《せいめい》の貴《たふと》きを知《し》り、財産《ざいさん》の重《おも》んずべきを知《し》つたのは、ツイ近《ちか》ごろのことである。
從《したが》つて眞《しん》に耐震家屋《たいしんかおく》について考慮《かうりよ》し出《だ》したのは、あまり古《ふる》いことでない。
五 耐震的建築の大成
建築《けんちく》に耐震的考慮《たいしんてきかうりよ》を加《くは》ふるやうになつた第《だい》一の動機《どうき》は都市の建設[#「都市の建設」に丸傍点]である。
人家密集《じんかみつしふ》の都市《とし》の中《なか》に、巨大《きよだい》なる建築《けんちく》が聳《そび》ゆるに至《いた》つて、はじめて震災《しんさい》の恐《おそ》るべきことが覿面《てきめん》に感《かん》ぜられる。
いはゆる文化的都市《ぶんくわてきとし》が發達《はつたつ》すればするほど、災害《さいがい》が慘憺《さんたん》となる。從《したが》つて震災《しんさい》に對《たい》しても防備《ばうび》の考《かんが》へが起《お》こる。が、これも比較的《ひかくてき》新《あた》らしい時代《じだい》に屬《ぞく》する。
第《だい》三の動機《どうき》は、科學の進歩[#「科學の進歩」に丸
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