つと》もこれに近《ちか》い音《おん》を有《いう》する鳳[#「鳳」に丸傍点](フング)至[#「至」に丸傍点](シ)の二|字《じ》によつて示《しめ》されたのが、今《いま》は「ホーシ」と讀《よ》む者《もの》がある。
 その他《た》伊賀《いが》のアベ(阿拜《あはい》)は「アハイ」となり信濃《しなの》のツカマ(筑摩)は「チクマ」となつたやうな例《れい》はなほ若干《じやくかん》ある。
 この筆法《ひつぱふ》で行《ゆ》けば、武藏《むさし》は「ブゾー」、相模《さがみ》は「ソーボ」と改稱《かいせう》されねばならぬ筈《はず》である。
 尤《もつと》も、古《いにしへ》の和名《わめい》に漢字《かんじ》を充當《じうたう》したのが、漢音《かんおん》の讀《よ》み方《かた》の變化《へんくわ》に伴《とも》なうて、和名《わめい》が改變《かいへん》せられた例《れい》は、古代《こだい》から澤山《たくさん》ある。
 例《たと》へば、平安京《へいあんけう》の大内裡《だいないり》の十二|門《もん》の名《な》の如《ごと》きで、その二三を擧《あ》ぐればミブ門《もん》、ヤマ門《もん》、タケ門《もん》は、美福門《みぶもん》、陽明門《やまも
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