に看過《かんくわ》し難《がた》きは、わが日本《にほん》の稱呼《せうこ》である。
 わが國名《こくめい》は「ニホン」または「ニツポン」である。外人《ぐわいじん》は思《おも》ひ/\に勝手《かつて》な稱呼《せうこ》を用《もち》ゐてゐるが、それは外人《ぐわいじん》の自由《じいう》である。
 併《しか》しわが日本人《にほんじん》が外人等《ぐわいじんら》に追從《つゐじう》して自《みづか》ら自國《じこく》の名《な》を二三にするのは奇怪《きくわい》千|萬《ばん》である。英米人《えいべいじん》の前《まへ》には「ジヤパン」と稱《せう》し、佛人《ふつじん》に逢《あ》へば「ジヤポン」と唱《とな》へ、獨人《どくじん》に對《たい》しては「ヤパン」といふは何《なん》たる陋態《ろうたい》ぞや。
 吾人《ごじん》は日常《にちぜう》英國《えいこく》を、「イギリス」、獨國《どくこく》を「ドイツ」と呼《よ》ぶが、英獨人《えいどくじん》は吾人《ごじん》に對《たい》して自《みづか》ら爾《しか》く呼《よ》ばないではないか。
 日本人中《にほんじんちう》には今日《こんにち》でもなほ外人《ぐわいじん》に對《たい》して臺灣《たいわん》を
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