うかりうゐき》の全部《ぜんぶ》を占領《せんれう》して國《くに》を魏《き》と稱《せう》したが、魏《き》は漢民族《かんみんぞく》の文化《ぶんくわ》に溺惑《できわく》して、自《みづか》ら自國《じこく》の風俗《ふうぞく》慣習《くわんしふ》をあらため、胡語《こご》を禁《きん》じ、胡服《こふく》を禁《きん》じ、姓名《せいめい》を漢式《かんしき》にした。
 果然《くわぜん》彼《か》れは幾《いく》ばくもなくして漢族《かんぞく》のために亡《ほろ》ぼされた。獨《ひと》り拓拔氏《たくばつし》のみならず支那塞外《しなさくぐわい》の蠻族《ばんぞく》は概《おほむ》ねその轍《てつ》を履《ふ》んでゐる。
 わが日本民族《にほんみんぞく》は靈智《れいち》靈能《れいのう》を有《も》つてゐる。炳乎《へいこ》たる獨特《どくとく》の文化《ぶんくわ》を有《いう》してゐる。素《もと》より拓拔氏《たくばつし》や印度人《いんどじん》やトルコ人《じん》の比《ひ》ではない。
 宜《よろ》しく自國《じこく》の言語《げんご》を尊重《そんてう》して飽《あ》くまでこれを徹底《てつてい》せしむるの覺悟《かくご》がなければならぬ。
 然《しか》るに今
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