とがない。
 世界《せかい》の何國《なにぐに》の人《ひと》も支那《しな》では姓《せい》を先《さき》にし、名《な》を後《あと》にすることを知《し》つてをり、支那《しな》の風習《ふうしふ》に從《したが》つてゐる。世界《せかい》の何國《なにぐに》の人《ひと》も日本《にほん》では姓《せい》を先《さき》にし、名《な》を後《あと》にすることを知《し》つてゐる筈《はず》であるが、日本人《にほんじん》が率先《そつせん》して自《みづか》ら姓名《せいめい》を轉倒《てんたふ》するから、外人《ぐわいじん》もこれに從《したが》ふのである。
       三 彼我互に慣習を尊重せよ
 或人《あるひと》は、日本人《にほんじん》が自《みづか》ら姓名《せいめい》を轉倒《てんたふ》して書《か》く事《こと》は國際的《こくさいてき》に有意義《ゆういぎ》であり、歐米人《おうべいじん》のために便宜《べんぎ》多《おほ》きのみならず、吾人《ごじん》日本人《にほんじん》に取《と》つても都合《つがふ》がよいといふが、自分《じぶん》はさう思《おも》はぬ。
 結局《けつきよく》無識《むしき》の歐米人《おうべいじん》をして、日本《にほん》でも
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