簡單《かんたん》で要領《えうれう》を得《え》た標語《へうご》である。建築《けんちく》殊《こと》に住家《ぢうか》でも、正《まさ》にこの通《とほ》りで、「精々《せい/″\》善美《ぜんび》なる建築《けんちく》を造《つく》れ」と云《い》ふのが最後《さいご》の結論《けつろん》である。然《しか》らば善美《ぜんび》とは何《なん》であるかと反問《はんもん》するであらう。夫《それ》は食《しよく》に關《くわん》して述《の》べた所《ところ》と同工異曲《どうこうゐきよく》で、建築《けんちく》に當《あ》てはめて云《い》へば、善《ぜん》とは科學的條件《くわがくてきでうけん》の具足《ぐそく》で美《び》とは藝術的條件《げいじゆつてきでうけん》の具足《ぐそく》である。さて、夫《そ》れが實際問題《じつさいもんだい》になると、土地《とち》の状態《じやうたい》風土《ふうど》の關係《くわんけい》、住者《ぢうしや》の身分《みぶん》、境遇《きやうぐう》、趣味《しゆみ》、性癖《せいへき》、資産《しさん》、家族《かぞく》、職業《しよくげふ》その他《た》種々雜多《しゆ/″\ざつた》の素因《そいん》が混亂《こんらん》して互《たがひ》に相《
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