でも體質《たいしつ》職業等《しよくげふとう》に從《したがつ》て選擇《せんたく》が違《ちが》ふ。その上《うへ》個人《こじん》には特殊《とくしゆ》の性癖《せいへき》があつて、所謂《いはゆる》好《す》き嫌《きら》ひがあり、甲《かふ》の好《この》む處《ところ》は乙《おつ》が嫌《きら》ふ處《ところ》であり、所謂《いはゆる》蓼《たで》喰《く》ふ蟲《むし》も好《す》き好《ず》きである。その上《うへ》個人《こじん》の經濟状態《けいざいじやうたい》に由《よつ》て是非《ぜひ》なく粗惡《そあく》な食《しよく》で我慢《がまん》せねばならぬ人《ひと》もあり、是非《ぜひ》なく過量《くわりやう》の美味《びみ》を食《く》はねばならぬ人《ひと》もある。畢竟《ひつきやう》十|人《にん》十|色《いろ》で、決《けつ》して一|律《りつ》には行《ゆ》かぬもので食《しよく》の本義《ほんぎ》とか理想《りそう》とかを説《と》いて見《み》た處《ところ》で實際問題《じつさいもんだい》としては餘《あま》り役《やく》に立《た》たぬ。夫《そ》れよりは「精々《せい/″\》うまい物《もの》を適度《てきど》に食《く》へ」と云《い》ふのが最《もつと》も
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