しらねど、何でも昨夜新山でかいた通信にはたしか、こんなことがかいてあったらしい。
「とうちゃんは、今、新山の学校の二階にいる、お土産をもっていく……火の用心……云々」
ここで記念サツエイをパチン。霧は太平洋のほうからしだいに晴れてくる。青ずんだ太平洋や岬が見えてきた。
ここに和田校長の即興歌を一つ
[#ここから1字下げ]
晴れた/\や空が晴れたや
太平洋まで空がはれたや
[#ここで字下げ終わり]
このや[#「や」に傍点]に妙味があるのだが……
六時三十分頂上出発。
下ること数町、大雪渓に驚き、雪の上にて再びレンズをパチリ。
五
八時頃、笹谷村着。古風な家並みの中に五月鯉が一尾腹をふくらましていた。ここにある分校にて郷土史に関する記録を見せてもらう。
うやむや[#「うやむや」に傍点]の関跡にて小憩、往時の[#「往時の」は底本では「住時の」]面影をしのびながら野上村に着く。
分校にて昼食。
ここに和田校長と一酔漢の面白い一幕が展開していくのであるが、このことは他日にゆずろう。
「やあ……親方ァ……これでもうな、若いときゃあ……な、満州の……な、えい……守備に選抜
前へ
次へ
全12ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
村山 俊太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング