。この前の二人は、余程の浜村屋贔屓とみえて、髪は路考髷に結い、路考茶の着物を着、帯は路考|結《むすび》にしていたそうだ。ところで、ここへ来る通りがかりに、お蔦というあの娘が寝かされているところをチラと見かけたが、これもやはり路考髷を結って、路考茶の着物を着、帯を路考結にしている。これは、いったい、どうしたというわけなんだろう。……不思議な死に方をした三人の娘が、揃いも揃って路考づくめ。すると、隕石ってやつは、だいぶと路考|贔屓《びいき》とみえるの」
「ごじょうだん」
「久米《くめ》の仙人でもあるまいし、隕石が路考贔屓の娘ばかり選んで隕ちかかるというわけはなかろうじゃないか。だから、これは、隕石などの仕業じゃない。何か、もっと他のことだ」
「すると、いったい……」
 源内先生は膠《にべ》もなく、
「それは、わしにもわからん。あとは勝手にやるさ」
「ここで突っ放すのはむごい」
「突っ放すも突っ放さないも、この後は訳はないじゃないか。どっちみち、路考に引っ掛りのあることに違いない。……その方を手繰ってゆけば、かならず何とか目鼻がつく。……おまけついでに言ってやるが、わしの考えるところでは、お
前へ 次へ
全45ページ中24ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
久生 十蘭 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング