平賀源内捕物帳
萩寺の女
久生十蘭

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)靄《もや》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)神田|鍋町《なべちょう》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1−91−26]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)てい/\
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          十六日の朝景色

 薄い靄《もや》の中に、応挙風《おうきょふう》の朱盆《しゅぼん》のような旭《あさひ》がのぼり、いかにもお正月らしいのどかな朝ぼらけ。
 出尻伝兵衛《でっちりでんべえ》、またの名を「チャリ敵《がたき》」の伝兵衛ともいう、神田|鍋町《なべちょう》の御用聞。
 正月の十六日は、俗にいう閻魔《えんま》の斎日《さいじつ》。
 商売柄、閻魔参りなどに行く義理はない。
 谷中《やなか》の方にチト急な用があって、この朝がけ、出尻をにょこにょこ動《うご》かしながら、上野|山内《さんない》の五
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