いことになった」
伝兵衛は、泣き出しそうな顔になって、
「先生の面目なんぞはどうだってかまいませんが、これが見込み違いだったとなると、大形《おおぎょう》に番屋中に触れ廻った手前、あっしは引っ込みのつかないことになってしまいます。これはどうも、弱った」
「……どうも、こりゃ星のせいではなかろうと思われる。……それはそうと、伝兵衛、お前、今朝死んだお蔦というここの娘の創も、この前の二人と寸分|違《ちがい》はないといったな」
「へえ、そう申しました」
「可笑《おか》しいじゃないか。仮に、隕石だとすると、どういうわけで、そうキチンと頭の真中にばかり隕ちて来るんだ。何故《なにゆえ》に、肩や尻にも隕ちないんだ」
「なるほど、これはチト可笑しい」
「創にしてからがそうだ。お前の言うところでは、深さといい、形といい、だいたい、三つとも符節を合したようになっているという。隕石に、そんな器用な芸当が出来るものか。その場合場合によって、必ず深浅大小《しんせんだいしょう》の差異が出来るはずだ。時には、頭が砕《くだ》けたようなものもあっていいわけだろう」
「へえ」
「それから、もう一つ訝《おか》しいことがある
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