何のためにこのようなことを企てたかと申しますと、恐らくこういうことではなかったかと思うのであります。つまり、絶対に不可能と思われる一連の殺人を行い、相相殺《あいそうさい》せしめて、証拠が不充分の故を以て己の無罪を飽迄も主張しようとする意図に出たものでありましょう。砕《くだ》いて申しますと、仮に江戸の殺人を認めたとすれば、大阪と長崎の殺人は陳東海の所為ではないということになる。また仮に、長崎の殺人は認めたとすると、江戸と大阪の殺人に対しては陳東海は無罪であります。この三つの事件を相殺させると、結局、陳東海はこの事件の下手人としての確実さが失われるわけで、証拠不充分の故を以て陳東海を釈放するほか道はないのであります。実にどうも綿密なことを考え出したもので、然らば陳東海なる者は極めて警抜《けいばつ》な才を持った人間だという他はありません。……では、どんな方法で陳東海がかような奇ッ怪超自然の殺人を行ッたのかと申しますと、からくりを露《あば》いて見れば、実にもう子供騙《こどもだまし》同然の仕掛。わたくしが冗々《くだくだ》と申しますより、実地についてお眼にかけた方が早道と思いますから、それをごらん
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