くだすって、適当なご判断をお下しねがいましょう」
そう言って、携《たずさ》えて来た支那蝋燭を入念に物差で測り、適当な長さに切縮めると、それを机の上に造作《つくりつ》けた燭台の上に立て、まわりの灯火《あかり》を悉《ことごと》く吹消してから、支那蝋燭にゆっくりと火を点した。
一同、固唾《かたず》を呑むうちに、忽然と一方の壁の面に現出してきた人の姿!
朱房のついた匕首を振上げ、今にも襲いかからんとするように凄まじい形相でこちらを睨んでいる陳東海の姿だった。
そのうちに微々《とろとろ》と蝋燭が燃え縮まり、掻消すように壁の姿はなくなって、また暗黒の部屋に返った。
源内先生は、蝋燭を吹消して以前のように灯火を点け、
「ご説明申上げるまでもなく、あれなる壁の面にレンズが一つ嵌込《はめこ》まれてありますが、蝋燭の火があのレンズの中心を通過する高さにまで燃え縮まってきますと、蝋燭の火はレンズを透してその後にある鏡に焦点を結び、その光はそれと相対の位置に据付けてある幻燈《フロ》の種板《たねいた》とレンズを透して反対側の壁に像を結ぶという他愛のない仕掛なのであります。蝋燭の火がレンズの中心を通りま
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