すと江戸と長崎で同じ日の同じころに姉娘と妹娘が、と仰言いましたが、すると、何んですか、お種さんの方にも何か間違いが……」
藤十郎は、頷いて、
「そン通りでございます。姉娘のお種も同じ七月十五日の盂蘭盆《うらぼん》の夜、古川町|闕所《けっしょ》屋敷で唐通詞の陳東海に匕首で脊骨の下を突ッぽがされて死んでしまいました」
先生は思わず膝を乗出して、
「それは、ほ、ほんとうのことですか」
「わたしが何ンの虚言《そらごと》を言いまッしょうか。本当《しょう》のことでござります」
「陳東海が殺したと誰が言いました」
「お種がじぶんの口から申しました」
「煩《くど》いようですが、確かに、陳東海だと言いましたか」
「そン通りでございます」
「それを聞いたのは誰でしたか」
「このわたしでござります」
同じ七月の十五日、江戸と大阪と長崎で三人の男女が同じ人間に同じ方法で殺害された。
庭窪の蘇州庵で無残な利七の死に態《ざま》を見たとき、何等かの方法でやれぬこともないと思い、また、ひょッとしたら陳東海の双生児《ふたご》の兄弟が諜合《しめしあわ》せてやったことかとも考えていたが、ここに到っては源内先生も唖然
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