、一世紀にたった一回しかないということを証明しているのだ。なにかしらの法則に支配されていて、けっして出鱈目なものでないことがわかるだろう。それどころか研究してみると、目の出かたはじつは秩序立った法則があることが判然する。ただしこの法則を発見するには、五十五万以上の組合せと同じ数だけの順列と取っ組まなくてはならん……五十万! どんな困難な仕事か君には想像も出来んだろう。おれは五年でやってのけるつもりでいたが、休みなしにやって十年もかかってしまった。そしておれはとうとうそれを発見したんだ。もう九分九厘というところまで行っている」そういうとふところから黒い手帳をとり出して頭の上でふりまわしながら「その公式はこの中にある。おれにとってルウレットはもはや僥倖を期待するあさはかな賭博ではない。おれにとってそれは組合せと順列の簡単な遊戯にすぎない。百万|法《フラン》を勝つのはわずか半日の暇つぶしですむのだ……どうだ無限の富を握るといったわけがわかったろう。……賭博の研究に十年も寝る目も寝なかったといったらひとは笑うだろうが、これは卑劣な利慾心だけではじめた仕事じゃない。じっさいのところ選り好みしよう
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