かがめてバタバタと扉のほうへ逃げる。壁のところですぐ追いつめられてしまった。
 古田は乾の襟がみをつかみ、ずるずると寝台のところまで引きずってきて、あおのけにその上へ圧えつけると、左手で乾の喉をしめながら、右手を上衣の衣嚢に突っこんで匕首をひきぬいた。乾の鼻の先でドキドキとそれが光った。いまにもグサリと喉元へきそうだった。
「助けてくれ」
「ぬかせ!」
 首すじにヒヤリと冷たいものがさわった。
「それあ……無理だ……あたしはなにも……」
「殺《ヤ》るぞ!」
 力まかせに喉をしめる。
「く、……くるしい……」
「てめえが密告《サシ》たと教えてくれたやつがある。……言え!」
〈こんな気狂いとやりあったって仕様がない。まあ、する通りさせておけ。……まさか殺すまでのことはしやすまい。……それにしても、どいつが言やがったんだ〉
 わざと怒ったような調子で、
「だれだ、それあ。そんな、余計なことを……言いやがった奴は!」
「久我だ」
 乾は歯がみをした。
〈ちくしょう〉それから、まるで唄でもうたっているような憐れっぽい口調ではじめた。
「……ああ、それで、わかった。……あいつ、あんたを煽てて、……
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