ある。なにか考えあぐねているらしく、ときどき呻き声のようなものをもらす。ながいあいだそんな風にしていたのち、
「……けっきょく、このなかにはいない、のかも知れん……」
 と、呟きながら、古田の写真をとりあげた。古田は軍服を着て、二十人ばかりの輜重自動車隊のまん中で得意そうに腕組みをしていた。
 つくづくと眺めたのち、急に顔を顰めると、ずたずたにひき裂いてそれを床の上へ撒きちらした。
 階下のどこかで、なにか軽く軋るような音がした……。乾は気がつかぬらしい。こんどは久我の写真をとりあげる。写真の面をていねいに掌で拭うと、その端に書かれた横文字を妙なアクセントで読みあげた。
「ウイズ・ベスト・レスペクト……、最上なる敬意を以て、か……。ふふん、肚のなかじゃひとを小馬鹿にしてるくせに。顔も辞令もすこし美しすぎるよ、こいつのは……。要するに得体の知れない人物さ。……だが、いまに化の皮がはげる。……こんな風にすましてると、いかにも愚直らしいが、この眼だけは胡魔化せない。そういえば、なるほど岡っ引の眼のようにも見える。……が、しかし……」
 階段がミシリと鳴る。乾は腰を浮かせて、キッとそのほうへふ
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