の朝、〈那覇〉に集った連中は、みんなよばれているんですよ、新聞記者の西貝君まで。……あっちの部屋には、警視庁の連中ががんばっていて、いま、〈那覇〉の男と、乾と、古田を調べています」
「あなたも」
「ええ、もちろん、僕も。……だが、あなたが案外元気なんで安心しました。……心配してたんですよ、本当に、ひどいことをされやしないかと思って。……それに、この暑さだし……。せめて、なにか冷たいものでもと思って、いろいろ奔走してみたんです。でも、警察では、迂散くさそうな顔をするばかりで、なんといっても受けつけてくれないんです。かんべんしてください、ほっておいたわけじゃないんだから」
葵は、もうひとたまりもなかった。掌で顔を蔽うと、身体をふるわして泣きだした。
久我も、うるんだような眼になって、
「疲れてるんだ。はやく帰っておやすみなさい。……送っていってあげたいけど、僕ももうすぐ呼び込まれるでしょうし……」
そういって、葵にハンカチを渡した。すぐ泣きやんだ。きれいに眼を拭うと、
「ごめんなさい。……いいえ、いいのよ。……それより、うち、ここで待ってます、あなたがすむまで……」
「いや、そんなこ
前へ
次へ
全187ページ中42ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
久生 十蘭 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング