ぺん位い泣きたくなる」
「驚いたなあ」
そういって、ふふんと笑った。チルは肩をぴくんとさせて、
「驚いたよ、あたしも。……よく考えて見たら、はじめて逢ったときから惚れてたんだ。……二人の間を割こうと思ってれいの非常梯子の手紙を送りつけたりしたんだから、あたしももろい[#「もろい」に傍点]ねえ。こうまでたわけ[#「たわけ」に傍点]になるものか。……驚いたてのはこのことなんです。……もう、首ったけなんだ。いのちまでも、さ。……このごろは朝から晩まであとをくっついて歩いてるんだよ」
「ほう、なんのために」
キッと乾の眼を見かえして、
「離れられないのさ。それにはちがいなかろう。が、ありていいえば、じつは保護してるつもりなのさ。一旦緩急があったらなんとかして切りぬけさせるつもりなんだ。……もう、だいぶ危くなってきてるからねえ、ご存じの通り」
乾はキラリと眼を光らせて、
「おい逃がすつもりか」
急に唇をへの字に曲げると鶴は子供の様にすすり泣きはじめた。
「……逃がしたい。逃がしたい。……でもあんたをさしおいて勝手なことはしない。あんたに抗《さか》らっても無駄だってことはよく知ってる。……
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