「その着物《トビ》はね、枝川町の溜堀を浚うとあがってくるんです」
「ど、どこの溜堀……、どうしてそんなことを知ってる」
「市の芥焼場の向いに、曲辰の材木置場がありますねえ……そこの溜堀です。尤もあたしもまたぎきなんだから、くわしいことは那須って新聞記者にきいてごらんなさい」
「那須? よく知ってるよ。……そうか、これあ、意外《モロ》かった。や、どうも……」セカセカと立ちかけた。
「おや、もうお帰りですか」
 男はまた中腰になって、「なんか、まだ、あるのか」
 ジロリと見あげると、「久我ってのはね、この間の大阪の銀行ギャングの共犯なんですぜ。正体は岩船重吉という、そのほうの大物なんだそうです。……ご存知なかったんですか」
 ピクッと膝を動かした。さり気ないようすをしながら、
「へえそりゃ、本当かね」
「そのほうは見事に失敗《しくじ》った。それで今度の絲満事件も、ほら、なんていうんだ、れいの……資金獲得のためにやったんだろうというんです。あれだけの大仕事をしておいて、ピイピイしてるてえのも、これでよく筋が通るんです。……しかし、くわしいことは知りませんよ。どうせ、これもまたぎきなんだから…
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