を馬鹿にしやがって……。あいつが殺ったとすると、あんな太いやつはありません。偽せの警察手帳かなんか出しゃがって、逆さにあたしをおどかしたりするんだから……」
「それで、どこへ行くというんだ」
「なんでも、穂高で友達が牛を飼っていて、そこまで行けばどうにかなるから、って、ただいま嬶のほうが、金を借りに来ました」
「貸してやったのか」
「ひとに貸す金なんぞあるもんですか。あたしに断わられると二っちも三っちもいかないてえことを知ってるんですが、なにしろ、無いものはやれない。……だから、あいつらは、ぬすとでもするのでなければ、歩いて行くより仕様がないはずなんです」
「や、有難う。それだけ判ればいいんだ」
と、いうと、男はがらくた[#「がらくた」に傍点]の上から帽子をとりあげた。乾はその顔を見あげながら妙な含み声で、
「それだけ、わかりゃあいいんですか?」
男はいぶかるような眼つきでふり返った。
「なんだ?」
乾が、むっつりと言った。
「あたしは、まだ知ってることがあるんです」
古絨毯の堆積へ、また腰をおろすと、身体をのりだして、
「そうか。……なんだ、それは」
しばらく間をおいて、
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