づつみをひろげた。そのなかに葡萄パンが五つはいっていた。山瀬はそれをとりあげると、あわてたように口へ押しこんだ。削痩《さくそう》した頬に夕陽があたって、動くたびにそこが鉛色に光った。
「うまい……」
久我の顔を見あげて微笑すると、ピクピク肩をふるわせながら、またうつ向いていっしんに喰べつづけた。ときどきグッと喉をつまらせては苦しそうに涙を流した。野良犬がものを喰べているようだった。この容貌魁偉な大男がこんなようすをしているのは、なにか一種のはかなさがあった。
久我が、いった。
「……ずいぶん、しゃべった。じゃ、これで別れるか。……すこしきいてもらいたい話があるんだが、そんなことをしてる時間もないな」
山瀬は口を動かしながら、
「かまやせん。もう当分逢えないかも知れないから、お互いに、言いたいことを言おう。心残りのないように。……それはどんな事か」
久我は苦笑して、
「下らないと思うだろうが、実はあの晩、僕は女装して〈那覇〉へ出かけているんだ」
「つまり応化《アタプテーション》だな。……どうして、なかなか適切だよ」
「まあ、そう言うな。はじめからそんな気でやったわけじゃないんだ。
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