その晩ホテルに舞踏会《パーティ》があってね、なるたけ仮装してくれというから、ホテルの婢《マグド》に女の服を借りてもらって、それを着て会へ出たんだ。十二時ちかくに部屋へ帰ろうと思って、帳場《コントール》で久我の部屋の鍵をというと、番頭が、久我さんでしたら夕方からずっとお部屋においでになります。ご用でしたらご都合を伺ってみましょうか、というんだ。……なるほど、鍵は僕が持っていた。妙な気がした。むらむらと冒険心が起きてきた。……さっきも言ったようにもう二時間もすれば〈那覇〉というところで、なにか犯罪がおきる。これを予知しているのは〈通知〉の告知人と僕だけだ。不在証明《アリバイ》はこの通り自然発生的に成立している。会は三時頃までやっているはずだからそれ迄に帰ってくればいい。……よし、行ってやれ。その家の前で待っていれば何が起きるかわかるだろう。ひょっとして金でも持って出てきたら、僕の警察手帳にものを言わせて、横合いからそいつを略奪してやるつもりだったんだ。……いや、もうお寝みだろうから、また明日くる、といってホテルを飛びだした。洲崎のおでん屋で二時すぎまで飲んで、それから〈那覇〉へ出かけた。す
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