足で立っていた。久我の顔を見ると、小馬鹿にしたように片眼をつぶって、
「あたし、毎日あなたのあとを尾行《つけ》ていたのよ。……知ってた?」
 久我はきびしく眉をよせながら娘の顔を見つめた。〈シネラリヤ〉へはじめて葵をたずねて行った晩、しきりに久我にからみついた鮭色のソワレだ。それから、尼ヶ崎でいちど見たことがある。……たしか、鶴《チル》とかいった娘だ。
 鶴はいかにもうれしくてたまらないという風に笑いだしながら、
「……ほらね、知らなかったんでしょう。うれしいわ。……ふむ、でも、こんなところに突っ立ってないで歩きだしましょうよ。……あたし、すこし話があるのよ。(といって久我の手をとると、勝手なほうへずんずん歩きだした)あたし、あなたのしたことなんでも知っててよ」
「なんで、僕のあとなどついて歩く?」
 鶴はちょっと眼を伏せて、
「それは言えないの」
「じゃ、神戸のときも僕をつけてたの?」
「そうよ。……でも、そんなことどうだっていいじゃないの。……あなた、さっきから三度もたべもの屋の窓をのぞきこんだわね。あなたは、たべものにむずかしいひとなのね」
 あまり見当ちがいなので、笑いださずに
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