を獲得するために銀行襲撃を計画していた。久我は大阪の事情に通じていたので、勢い企画に参加することになった。が、これとても明確な意志があったわけではない。むしろ、懶惰のゆえである。
この計画は失敗し、久我は東京へ逃げた。上海で買った偽造の警察手帳が、この逃走に非常な便利をあたえた。東京には思いがけない二つの事件が彼を待ちかまえていた。殺人と恋愛と……。そして、彼は結婚した。
働くな、それは精神の自由をころす。久我にとっては、無為は強烈な生活意志の対象であった。彼がひとりの間は、なるほどそれは彼の精神を開放し、自在に自由美の園を逍遙させてくれたが、結婚してからは、せっかくのアフォリズムも妻を苦しめるだけにしか役立たなくなってしまった。現に彼女は、彼の身勝手な主張《テーゼ》のおかげで、二人分の労苦を背負って喘いでいるのである。
ときどきこの自覚が、深いところに昏睡している彼のたましいを揺りうごかす。すると久我は、そのたびにむっくりはね起きて、こうしてもいられないと呟き、あてもなく、セカセカと町を歩きまわるのだった。生活のことばかりではない。どういう事情があったのか、葵は絲満を殺している
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