タポタと滴がたれる。網のなかに、丸く束ねたぼろ布のようなものがはいっていた。
「オーイ、旦那ア、なんか出たぜえ」
 腐ったようなシャツを着た白髪頭のルンペンが、それを両手にかかえて岸のほうへ駆けてきた。
 念いりにくくった針金をといて、地面のうえにひろげる。地色はもうわからないが、支那縮緬《クレープ・ド・シン》の女の服だった。そのなかに富士絹の白い下着。棒きれの先でひろげて見ると、地図をかいたように血の汚点がべっとりとついていた。
 乾はつくづくと検分すると、妙にとりすまして、いった。
「おい、おやじ、これをもとのようにくくって、いまのところへ沈めてくれ」
「えっ、また沈めるんですか」
「黙っていったとおりにすればいいんだ。……さがしてるのはこんなもんじゃない。……かかり合いになるからよ」
「へえ、ご尤も……」
 もとのように石をつめてくくられると、着物はまた溜堀の水の中へ沈んでいった。急に暮れかけてきて、うす闇のなかで、西貝の煙草の火が赤く光りはじめた。

     9

 秋風がふく。
 狭すぎる新宿の通りを、めっきり黝《くろず》んできた人のながれが淀みながら動いていた。ひとすじは
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