に、いわゆる習得的方法というのをやって見た。現場のまっ只中へ自分をおいてみたのです。……昨日曲辰材木置場の丸太の上へ腰をかけて、僕がもし犯人なら、こういう条件と地理に於て、いったいこの次にどういう行動を起すだろう……昨日、曲辰材木置場の丸太の上へ腰をかけて、つくづくと考えて見たんです。……(ニヤリとうれしそうに笑うと)……間もなく到達しましたよ。なんでもなかったです。……つまり、こうなんです。まず、血のついた服をぬいで猿股ひとつになる。服は錘をつけて木場の溜りへ沈める。それから頭と身体をすこし水に濡らして、シャツを小脇に抱えてスタスタと交番の前を通って行ったんです。……この辺の住人はひどく無造作で、暑くて寝られないと、夜でも夜中でも海へ泳ぎに出かけるんですね。もちろん裸の道中です。巡査も馴れっこなので、べつになにも言いやしない。……こういうわけで、犯人はなんのおとがめもなく関所を通りぬけたのです」
西貝が、くっくっ、と笑いだして、
「女が猿股ひとつになって、交番の前を通ったって、それで無事だったのかい」
那須はニコリともせずに、
「そうさ、女ならそんな芸当が出来るはずはないから、そ
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