…ところで蛤橋のほうから巡査がきた。あわてて白鷺橋を渡ろうとすると、その橋詰に交番がある。……この×の印がそうです。島から出ようとすると、どんな事をしてもその前を通らなければならない。止むを得ず後しざりをして、いったん島の奥に逃げこんだ。……やがて、間もなく戻って来て、交番の前を通って、市電の木橋のほうへ行ってしまった……としか考えられません。……なぜなれば、人間一匹が消えてしまう筈はない。のみならず、若い女がそんなところでまごまごしていたら、……危険は一刻毎に増大する。……あの辺は海風が吹いて涼しいものだから巡査が涼みがてらにむやみに巡視をするんです。この辺はなにしろ一目で見渡せる広っ場なんだから、どう隠れたってすぐめっかってしまう。……どうしたって、やはり交番の前を通って出ていったと思うより仕様がない。……ところが、その夜白鷺橋の交番には、しかも二人の巡査がいて、非常に暑い晩だったので、十二時から朝の四時まで交番の前へ椅子を持ち出して涼んでいたのです。ところが、その間女などは一人も通らない……もちろん、ひとは通ったが女は通らない、と言うのです。……僕はハタと行きづまった。苦しまぎれ
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