と、急に顔をそむけて)ぷう、……飲んでるんだね。……弱るなあ」
 なるほど、眼をすえて、抜けあがった蒼黒い額から冷汗を流していた。
 ハナは手をふり解こうともがきながら、
「おう、飲んでるよ。……見ちゃいられねえから、いままで角の桝屋でひっかぶっていたんだ。……あ痛て……、私の前もはばからず、乳くり合っておきながら、ひとの手を……ちくしょう、離しゃがれ、……やい、離せてえのに……、助平……そんならそうと、はっきりいって見ろ。……いつでもツルましてやらア、……なんだ、こそこそと……」
 すると、乾は急にすさまじい顔つきをして、
「狂人! 勝手にしろ!」
 と、いいながら、力一杯に長椅子のほうへハナを突きとばした。ハナは背凭せに強く頭をうちつけて、瞬間、息がとまったような眼つきをしていたが、やがて猛然と起きあがると乾の喉へ飛びついて行った。
「ちくしょう……ちくしょう……」
 もう、人間のような顔をしていなかった。

     8

 ひと束ほどの庭の胡麻竹が、省線が通るたびにサヤサヤと揺れる。新宿劇場の近くで、〈磯なれ〉という小料理屋の、いかにも安手な離れ座敷だった。
 擬物《まがいもの
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