んたのためならなんでもする。だがねえ、あとの騒動を待つまでもなく、いまのうちに別れちまうのがいちばんいいのだ。……あたしあ悪い事あ言わない。別れるならいまなんですぜ。ねえ、葵嬢、思いきって、すっぱりと……」
 カーテンの隙間から、ハナが顔をのぞかせた。急に険しい顔つきになって、裾をひるがえしながらつかつかとはいってくると、懐手のままで葵のまえへ立ちはだかって怒鳴った。
「オイ、ふざけるな」
 葵はあっけにとられてその顔を見あげた。
「なんだ、その面あ。……とぼけると、なぐるぜ。知ってもいようが、ここは源氏宿だ。裾を売るなら割前を出せ。無代で転ばれてたまるものか。てめえのような……」
 辛抱しきれずに口をきった。
「失敬ね。……あたしここでなにをして?」
「しらばっくれると、ひっくりかえして験《あらた》めるぜ。……おい、やって見せようか」
 と、いって、葵の裾に手をかけた。葵は身もだえをしながら、喘ぐように、いった。
「ゆるして、ちょうだい」
 乾はゆっくり立ちあがると、ハナの手を逆手にとって、
「冗談じゃない。ちょっと世帯話をしてたんでさ。……ま、かんべんしてやってくださいよ。(という
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