見せてよ。あたしの過去さえ告白する気なら、びくびくすることはいらないの。……そうしたらもう、あなたともそれで……」
久我はとりあわずに、ゆっくり扉をしめて出て行った。
カーテンをおし開けて事務室へはいってゆくと、薄暗い隅の長椅子に乾と朱砂ハナが並んで、なにかこそこそと話をしていた。
葵を見ると、乾は、ついと立ち上って、あざとい愛想笑いをしながら、
「お、葵嬢。……いまお部屋へ推参しようと思っていたところです。その後、ますますご濃厚の趣で、まことに大慶至極です」
ハナも長椅子の上で腰を浮かせながら、
「……すこし話していらっしゃいまし。……それともなにか御用でしたか」と、いった。用事がなかったら早く出てゆけ、といわんばかりであった。
葵はそれどころではなかった。頁を繰るのももどかしいようにして、ようやく特高課の番号をさがし出すと、久我千秋を出してくれ、とたのんだ。すると、そんな人間はこっちにいない、ほかの課のまちがいではないか。庶務課へかけてきいて見るがいい、という返事だった。庶務課へかけると、本庁にはそんな名のひとはいない。ほかの署へたずねて見なさい、といって、電話を切って
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