をまわって離家に行きつくと、横手においてあった梯子を起し、身軽にスラスラと昇ってゆく。さすが馴れたもので切妻《きりづま》の破風の下に人がひとり入れるだけの隙間をこしらえ、ふたりを手招きしてからゴソゴソと穴の中へ入って行ってしまった。
乗りかかった船で、アコ長ととど助のふたりが苦笑しながらその後から天井裏へ這いこむ。
屋根の野地板《のじいた》の裏がわが合掌なりに左右に垂れさがり、梁や化粧※[#「木+垂」、第3水準1−85−77]《けしょうたるき》が骨格のように組みあったのへ夥しい蜘蛛の巣がからみついている。
糸蝋燭の光がとどくところだけはぼんやりと明るいが、それもせいぜい二三|間《げん》。前もうしろもまっ暗闇。埃くさい臭《にお》いがムッと鼻を衝く。
天井板を踏み破らぬように用心しながら進んで行くと、先に立っていた清五郎が急に足をとめ、なにか指しながら二人のほうへ振りかえった。
指されたところを見ると、なるほど、六寸ばかりの守宮が胴のまんなかを五寸釘でぶっ通されたまま死にもせずにヒクヒクと動いている。
油を塗ったようなドキッとした背を微妙にうねらせて急に飛びあがるような恰好をす
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