《きょうしょう》の色を浮かべ、
「おッ、それは大事!」
 あわただしく膝をついて、
「して、望みの品というのはどんな物だ」
「香木五十八種はもとより、市中にて売出しおります髪油《かみあぶら》、匂油《においあぶら》いっさい。ひとまとめにしてお差しいれを願います。ただいまも申しあげましたように、危急存亡《ききゅうそんぼう》の場合、なにとぞ速急《そっきゅう》のお取りはからいを……」
「いかにも、承知いたした」
 言いすてて、藤波は脱兎のように揚屋から飛びだして行った。
 顎十郎は、その後を見おくりながらニヤリと笑い、
「こうしておけばまず大丈夫。それにしても、あの気ちがい野郎はなにを勘違いして泡をくってスッ飛んで行きやがったんだろう。おれは、お前の肝ッ玉はこんなに小さいと指で丸を書いて見せただけなんだが、あの頓馬《とんま》のことだから、丸を書いたのを、御本丸のことなのだと早合点したのかも知れない。こいつア、大笑いだ」
 それからちょうど半刻。さすが五百人もの輩下をつかう藤波のすることだけあって、大広蓋に香道具やら香木、煉香《ねりこう》、髪油にいたるまで、ひとつも洩れなく山ほどに積みあげて持ち
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