顎十郎捕物帳
菊香水
久生十蘭
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)恍《とぼ》けた
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)筆|御染筆《ごせんひつ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)魴※[#「魚+弗」、第3水準1−94−37]《ほうぼう》
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恍《とぼ》けた手紙
「……手紙のおもむき、いかにも承知。……申し越されたように、この手紙の余白に、その旨を書きつけておいたから、これを御主人に差しあげてくれ」
「それで、御口上は?」
若いくせに、いやに皺の多い古生姜《ひねしょうが》のようなひねこびた顔で、少々ウンテレガンらしく、口をあけてポカンと顎十郎の顔を見あげながら、返事を待っている。
「わからねえ奴だな。……だから、お前の持って来た手紙のはしに、かならずお伺いいたしますとちゃんと書いてあるというンだ」
へへえ、と、まだ嚥みこめぬ顔で、
「つまり、これをまた持って帰りますれば、それでよろしいので、……なんだか、妙だ」
顎十郎は癇
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