お調べは、いつなりとお心のまま。しかし、一刻の後にさしせまったこの危急は、いま、時を逃せばとりかえしのつかぬゆゆしい大事が出来《しゅったい》いたします。わたくしといたしましては、これが最後の御奉公。お取調べを小半日《こはんにち》御猶予くだされ、お願いもうす品々をお差しいれくださらば、それによって犯人の見こみをつけ、この不祥事を、かならず未然にふせいでお眼にかけます。……非違《ひい》は非違として、手前がいささか推理の法に通じていることは、あなたもたぶんご存じのはず。……手前が申すことを、なにとぞ御信用くださって、ただいま申しあげた次第、枉《ま》げてお聴きずみ願わしく存じます」
 藤波は、キッと眉を寄せてなにか考えていたが、油断のない顔つきで、
「もとより、どんな奸策をめぐらそうと、おめおめ貴様を逃がすような藤波じゃないから、そのほうの懸念は少しもない。事と次第によっては殿様にお願いして、半日の猶予をいたすことも出来よう。して、御高位とは、いったいどなたのことだ」
 顎十郎は、
「恐れながら」
 と言いながら、藤波のそばにすり寄って、自分の手のひらへ指で丸を書いて見せた。藤波は見るより恐悚
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