の他、諸国の山から出る山金を買入れて小判をつくるが、そのほかに上納金の鑑定封印、潰金《つぶしきん》、はずし金の買入れ、両替屋から瑕金《きずきん》、軽目金《かるめきん》をあつめて、これを改鋳する仕事もした。
 吹所の一廓は、吹屋、打物場《うちものば》、下鉢取場《したはちとりば》、吹所棟梁詰所、細工場《さいくば》、色附場《いろつけば》の六|棟《むね》にわかれていた。
 小判吹きはなかなか手のかかるもので、まず位改《くらいあらため》といって、金質の検査をし、その後に、さまざまの金質のものを一定の品位にする位戻《くらいもどし》ということをやり、砕金《さいきん》といって地金《じがね》を細かに貫目を改め、火を入れて焼金《やきがね》にし、銀、銅、その他をまぜる寄吹《よせぶき》の工程をへ、それから判合《はんあい》、つまり、品質を決定し、それを打ちのばして延金《のべきん》にし、型で打抜き、刻印を捺《お》し、色附をしてようやく小判ができあがる。
 金局では、一枚ずつ改めて包装し、千両、二千両箱におさめてこれを金蔵へ収納する。
 なにしろ通貨をあつかう場所なので、金局の平役以下、手伝い、小役人、吹所の棟梁、
前へ 次へ
全48ページ中12ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
久生 十蘭 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング