「や、とうとうつかまえた、こんなところに隠れていたのか、仕様のない悪戯《いたずら》っ子だぞ! お前は!」と愛撫するように扉のあたりを軽打《タッペ》した。「去年は、あっちのユウカリの樹のそばへつないでおいたのですがね、今年はこんなところへ逃げ出して来ている……ほら、ご覧なさい。ちゃんと鎖で結《ゆわ》えつけておくんですが、いつも鎖を引き切ってしまう」
 なるほど、小庇《こびさし》の下には、緑青の噴《ふ》いた古ぼけた鐘が吊されてあって、その中心から細い鎖が、枯草の中をはって、門の方へどこまでも続いている様子、時々夜の闇をなめるように旋回して来るアンチーブの灯台の、蒼白い光芒の中に浮び出すその荘館《シャトウ》というのは、※[#「てへん+夸」、37−下−12][#「※[#「てへん+夸」、37−下−12]」に傍点]門は崩れ鉄扉は錆び、前面の壁は頂銃眼《クレノオ》のあるあたりまで、猫蔦《ねこつた》の茂るにまかせた見るからにすさまじいさながらの廃墟、時刻はあたかも丑満刻《うしみつどき》、万籟寂として滅し、聴えるものはホイホイというなにやら怪しい物音ばかり。コン吉は早や魂宙外、
「あの、ホイホイという
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