とき雑煮を、薄寒き棟割長屋《アパルトマン》の一室にて祝うことになったが、コン吉たるもの、風光|明媚《めいび》、風暖かに碧波|躍《おど》る、碧瑠璃海岸《コオト・ダジュウル》の春光をはるかに思いやって鬱々《うつうつ》として楽しまず、一日、左のごとき意味なき一詩を賦《ふ》して感懐をもらしたのは、
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|Autant de pluie autant de tristesse, Paris qui m'oppresse!《くさくさするほどあめがふる》
|Fermons les yeux, 〔Re^vons〕 au printemps de Riviera,《ぱりではるをまつかいな》
|Aux figuiers qui 〔mu^riront〕, au vent qui passera,《みなみのくにではいちじくが》
|A l'odeur du soleil sur les lavandes douces.《もうむらさきにうれているげな》
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さりながら念仏往生義にも、説くごとく、心に戒行を持って一向専念せば、いずれの弘願ぞ円満せざらん。ここに一念発起したコ
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