そ同病相憐れむっていうものよ、なにしろ公爵は、大きな遊艇《ヨット》や、すばらしい競馬|馬《うま》を持っているそうだから、この冬はずいぶん愉快に暮らせるに違いないわね。ともかく君が何んといってもあの人が話していた『竜の玉』ってのを一目見ないうちは帰らないつもりよ。さ、早く鞄を持ちたまえ、屋内《なか》へ入りましょう。ぐずぐずしないで!」と、早や小走りに歩き出す。
 コン吉はせんかた泣く泣く、大きな帽子箱と鞄とラケットを両手にさげ、とぼとぼとタヌのあとについて荘館《シャトオ》の横手に廻ってみると、大公におかせられては、いまや、欅《けやき》の大掛矢を振い勝手口の階段の横について、石炭を汲み入れる二尺四方ほどの鉄扉に対して大破壊を行なっている様子。
 やがて、鉄扉は長らくの打撃にたえかねたとみえ、ぐゎらりと内部に落ち込んだ。様子見澄ました公爵は、おもむろにハンカチで指をぬぐってから、コン吉に、
「さ、どうぞお入り」と挨拶した。
 コン吉が恐る恐る暗い孔《あな》の中を覗いてみると、はるか七八尺も底の方に、硝子《ガラス》の破片《かけら》のように尖ったものすごい塊炭が、ぞろりの牙をむいているのが見えた
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